オーダーメイド家具を手がける寒川町の『フリーハンドイマイ』。代表のイマイさんがつくる家具は、それを使う人の毎日に優しく寄り添ってくれると評判です。これまで多くの家具をつくってきたイマイさんですが、おうちで過ごす時間が増えたせいか、最近は食器棚についてのお問い合わせが多いとのこと。そこで今回はこれまで手がけた食器棚の中から、お気に入りの3点をイマイさんのあたたかいコメントとともにご紹介します。どれもオーナーの希望や使い方を反映していて、ひと口に食器棚と言ってもこんなに違うことに驚きすら覚えます。オーダーを検討している方はもちろん、家具・インテリア好きの方もぜひ参考にしてみてくださいね。
#1 ブラックウォールナットとコーリアンを使ったセパレートキッチンとカップボード 鎌倉 W邸
いつも懇意にして頂いている平成建設さんからお声掛け頂いたリノベーションのお仕事でした。最初に現地の様子を拝見させて頂いた時に、これはルドルフ・シンドラー邸のように素材がそのままの姿で息づいているような空間になったらすてきだろうなと思ったのを覚えております。
いろいろお話を進めていくうちにもう少しモダンな印象にまとまっていったのですが、私の気持ちは常にそういう素材感が良く表れた形を心がけ、平成建設さんの設え方の心地良さと、Wさんの装いの晴れやかさも伴ってとても美しい空間になりました。
#2 ナラと真鍮と白い扉とタイルを組み合わせた食器棚 世田谷 Y邸
ナラ材は少し使いこんできた頃の色がとても良いのです。仕上げてオイルを擦り込んだばかりの明るさも美しいのですが、少し陽の光を浴びて人の手で振れられてくると、黄褐色が深みのある茶色になってきます。そこに色を添えるように白い扉のパントリーには真鍮磨き仕上げの取っ手をつけたのです。真鍮もきれいにクリア塗装が掛かっていては素材の持つ深みが生かされませんので、磨き仕上げのものを使います。やはり経年変化で色がくすんでくる頃が美しい仕上がりです。そしてすこし色褪せた印象のグレイッシュなタイルを張りこんで、どこかフレンチシャビ―な印象を持つ食器棚ができあがりました。良い色です。
#3 ステンレスとナラのキッチン背面収納 柏 Y邸
私よりも少し年上のご夫婦のために作った食器棚です。
私が自宅を建てる時に参考にしていた建築家さんに中村好文さんの作品があるのですが、そのお話をYさんにすると、以前からずっと行ってみたかった駒場にある民藝館のお話をしてくださいました。好きなものとの付き合い方を教えてくださったとてもよい時間をくださったのでした。
形はシンプルに、普段使う器は引き出しに入れて、取りやすくする器はガラス扉の中に。カウンタートップはへこたれないようにステンレスでしっかり作って。シンプルな形はその人の思いをそのまま映します。すてきな台所。
